昔、料理の師匠にこう聞きました。
私:「なぜアワビは蒸して柔らかくするのに
とこぶしはお湯で柔らかくするのですか?」
師匠:昔からそうしてんねん。
昔はそんなもんだったんです。
技を盗んだり教えてもらったりして覚え、経験則で成り立っていました。
(アワビは結局今もわかりません。。)
料理は科学的変化ですが、科学の概念はほぼありませんでした。
なので昔から行なっていることは理屈にあっていることとあっていないことがあります。
例えば
修行時代に青菜を茹でる時に塩を入れると色が鮮やかになると言われました。
これは科学的に当たっています。(が、先輩は経験則です)
しかし、これには条件があります。
⒈たっぷりの沸騰したお湯で湯がく。
⒉お湯の塩分濃度を2%にする。
たっぷりの沸騰したお湯で湯がくと、お湯の温度が落ちにくい為早く湯がけます。湯がく時間が長いと色素が変色し色が悪くなります。
塩分濃度を2%にすることにより変色を抑え、ビタミンなどの水溶性分が流出するのを抑えます。2%以下では効果は薄れます。
また茹で上がったらすぐに冷水で冷まさないと、これまた色が悪くなります。
しかし真水の冷水でしたら、そこでビタミンなどの水溶性分が流出するので
ここでも2%の塩水の冷水が良いです。
では逆の例をあげます。
「大根は頭の方が辛くないので煮物に使って下の方は大根おろしに」
と言われました。
しかし、実際は大根の辛味成分は大根全体の皮の近くにあるので頭の方、下の方は関係ありません。
辛みが嫌な時は皮を分厚くむくと良いです。
昔の料理人は机上で勉強した知識ではなく、ほとんどが経験則でした。また、食材自体も農業、機械の技術、科学の進歩で扱いも変わってきました。
他にも一部紹介します。
・米は汁が澄むまで研ぐ❌
今は精米機の能力も上がり昔ほど糠が米に残っていません。
「水を入れたら素早く洗い、水を捨てる」を4回くらい繰り返せば
OKです。
・チャーハンはご飯を切るように混ぜる❌
中華料理屋さんでお玉でごはんを鍋に押し付けるように焼き飯を作ってい
流のを見たことありませんか?
冷やご飯を切るように混ぜていたら、いつまでたっても混ざりません。
・青菜をある程度炒めてから塩を入れる❌
フライパンで油を熱し、青菜を入れる前に塩を入れる。(塩の量の目安は1.5%)
油と塩を馴染ませ高温にすることによってほうれん草を入れた時に塩と油で
素早くコーティングすることができ、余分な水分が出るのを防ぎシャキシャキの食感を保ってくれます。
おでんの大根は一晩おくと味がしみて美味しくなる❌
一晩置くより弱火でコトコト煮る方が味が早く染みます。